うま酒の歌
美飲にを喫ふるかね哉一杯二杯楽悦に掌底拍ち挙ぐるかねや三杯四杯言直し心直しもよ五杯六杯天足らし國足らすもよ七杯八杯
【口語訳】オイシク飲ムコトヨ、一杯二杯ハニコニコト楽シクナリ手ヲ打ツコトダヨ、三杯四杯ハ(ウカレテ)コトバモ心モ純粋にナッタヨ、五杯六杯ハ天モ国モスベテ満足ダヨ、七杯八杯ハ
『記紀』歌謡に近い形で、古代語を巧みに使い、謡いものとして酒興の過程が巧みに詠みこまれるとともに、真淵の古道思想がよく表れています。真淵の酔眼に古代の理想社会が浮かんだことだろうと評されています。真淵の孫弟子高林方朗(みちあきら)が拓本にして分け真淵を顕彰しました。
真淵の長歌は32首
真淵は、『万葉考』巻3の序で、長歌に言及し、古い時代の長歌について「言少なくしてみやびひたぶるにして愛たし、言少なかれど、心通り心ひたぶるなるが憐なるは、高く真なる心より出ればなり」としています。
平安時代以後、ほとんど顧みられなくなっていた長歌は、真淵と栗田土満など縣門の人々によって復活されたといって過言でないとされています。